山時聡真さん×中川駿監督インタビュー|映画『90 メートル』が描く親子の愛

難病の母を支える高校生の葛藤を描いた映画『90 メートル』が、2026年3月27日(金)に全国公開されます。本作は「ヤングケアラー」という社会的な題材を扱いながら、中川駿監督の実体験を投影した深い家族愛の物語。今回は、主演の山時聡真さんと中川監督に、撮影の舞台裏や福岡への想いを伺った貴重なインタビューをお届けします。

目次

若者の葛藤と親子の愛の物語。映画『90 メートル』

(C)2026 映画『90 メートル』製作委員会

本作は、LGBTをテーマにした『カランコエの花』などで高い評価を得る中川駿監督の最新作です。「北九州映画祭」のオープニング作品にも選出された注目作で、難病の母親のケアを担う高校3年生の息子・佑(山時聡真)と、その母・美咲(菅野美穂)の姿を丁寧に描いています。ヤングケアラーとしての過酷な現実だけでなく、誰しもが抱える「夢と現実の選択」という普遍的なテーマが胸を打ちます。
2026年2月28日に開催された第3回北九州国際映画祭では、オープニング作品としてプレミア上映されるなど話題を集めています。

映画『90 メートル』あらすじ

(C)2026 映画『90 メートル』製作委員会

母子家庭で育った佑(たすく)は、高校2年の時に母・美咲が難病を患ったことで大好きなバスケットボールを辞めることに。ヘルパーの助けを借りつつも、ヤングケアラーとして家事や母のケアに追われる日々。

(C)2026 映画『90 メートル』製作委員会

東京の大学への進学を夢見ながらも、身体の自由を失っていく母を一人にする現実に佑は葛藤します。そんな折、24時間のケア体制が整い母から「好きなようにしていい」と背中を押されますが、佑の心にはまだ言えない想いがありました。

主演の山時聡真さん×中川駿監督インタビュー

監督が本作に込めた並々ならぬ想いから、主演・山時さんの役作りまで深く語っていただきました。

──本作は監督のご自身の経験をもとに作られたそうですが、今このタイミングで制作された理由は?

中川監督(以下、中川):ずっと母と息子の家族愛を描きたいと思っていた中、ALSの母とケアをする息子のドキュメンタリーに出会ったのがきっかけです。描かれていた不器用な愛の形が、10代の頃の僕と母の関係そのものでした。僕の母は別の病気でしたが、自分たちを重ねた時に生まれたストーリーがこの映画の原点です。

──山時さんとご自身のお母様が電話で話すところを見るというオーディションを行ったそうですが、決め手となったところは?

中川:僕は母に感謝を伝えられないまま別れてしまった後悔があり、それを作品で昇華したかった。オーディションで山時くんがお母様と電話で話す様子を見た時、彼はしっかり尊敬の念を伝えられていたんです。僕の“ありたかった理想の姿”が彼の中にあり、この後悔を託せると思いました。

──山時さんは、佑が抱える「諦め」という感情をどう受け止めましたか?

(C)2026 映画『90 メートル』製作委員会

山時さん(以下、山時):僕も大学受験の際、仕事一本にするか両立するかですごく悩んだので、内容が違えど進路の悩み自体は変わらないなと感じました。ただ佑の環境は諦めざるを得ない状況。演じていて胸が苦しくなる瞬間もありましたが、周りの人の優しさがその感情を打ち砕いてくれる感覚がありました。

──劇中に出てくる呼び出しのベルはどんな存在でしたか?

(C)2026 映画『90 メートル』製作委員会

山時:役の中では母と佑をつなぐ糸のような存在です。縛られているものではありましたが、あの音が聞こえること自体が「まだお母さんとつながっている」という安心感にもなっていたのではないかと思います。

──お二人の福岡に対するイメージや思い出を教えてください。

山時:僕は東京出身ですが、幼少期の一時期を福岡で過ごしていたので、今でも懐かしい場所という感覚が強いんです。特に覚えているのが、家族と一緒に夜、屋台のラーメンを食べに行ったことです。小学生だったので、普段なら寝ているような深夜に、イベント気分で出歩くのがすごくワクワクして……。今思えば、あの屋台の活気や温かい空気感が、僕の福岡の原風景になっています。

中川:屋台、いいですよね。僕は仕事で何度か訪れていますが、福岡といえばやはり「食」のイメージ。今日も空港に着いた瞬間から、もつ鍋の看板がこれでもかと目に入ってきて…福岡に来た実感が湧くと同時に、おいしいものを食べたいというモチベーションになっています。

山時:実は僕、今では巨人のファンを公言していますが、福岡にいた頃は福岡のチームを応援していたんですよ(笑)。今でも試合結果は気になりますし、福岡で撮影した映画『めんたいぴりり』の時も、現場で毎日明太子を食べて「やっぱり最高だな」と思っていました。福岡に来ると、自然とエネルギーをチャージできるような気がしますね。

──最後に、夢と家族の思いで悩んでいる同世代の方へメッセージをお願いします。

(C)2026 映画『90 メートル』製作委員会

山時:僕自身も「学業と仕事を両立させるのか、どちらか一本に絞るのか」と、自分の思いと親の願いの間で激しく葛藤した経験があります。でも、今回の役を通して、そして自分自身の経験からも言えるのは「正解はない」ということです。
もし間違ったかなと後悔したとしても、その時に選んだ選択を「これで良かった」と思えるような過ごし方をこれから積み重ねていけば、それが正解になっていくんだと思います。だから、あまり自分を追い詰めすぎないでほしい。この映画を通して、「みんな同じように何かしら抱えて生きているんだな」と少しでも心が軽くなってもらえたら嬉しいです。

中川:特にヤングケアラーと呼ばれる、10代で家族のケアを担っている子たちに伝えたいことがあります。今の状況が世界のすべてのように感じて、孤独や絶望感の中にいるかもしれません。でも、世界は皆さんが思っているよりもっとずっと広いんです。
誰の助けも得られないと諦めないでください。視野を少しだけ広げて、一歩だけ勇気を出して踏み出してみれば、手を差し伸べてくれる大人は必ずいます。
これは断言できます。絶望の淵にいても、絶対に助けてくれる人に出会える。だから、どうか自分の人生を諦めないでいてほしいです。その一歩を後押しできるような作品になればと願っています。

〜山時さん、中川監督、貴重なお時間をいただきありがとうございました!〜

難しいテーマを扱いながらも、鑑賞後には“人は優しい”と再確認させてくれる映画『90 メートル』。中川監督の繊細な演出と、山時聡真さんの瑞々しくも芯のある演技が、観る人の心に静かな風を吹かせてくれます。
家族との向き合い方、そして自分の人生の選択に迷った時、ぜひ劇場で彼らの物語を受け取ってください。

スタイリスト:MASAYA (PLY) 
ヘアメイク:Minori Hatanaka
取材・撮影:博多あや.

■ 映画『90 メートル』
上映開始:3 月 27 日(金)全国公開

<作品情報>
キャスト:山時聡真 菅野美穂 西野七瀬 南琴奈 田中偉登 西野七瀬
監督・脚本 : 中川駿
主題歌:大森元貴「0.2mm」(ユニバーサル ミュージック / EMI Records)
製作:映画「90メートル」製作委員会
製作プロダクション : ダブ
配給:クロックワークス
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(日本映画製作支援事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会

<福岡市の上映映画館>
T・ジョイ博多
  住所:福岡県福岡市博多区博多駅中央街1-1 9階
  電話番号:092-413-5333
*ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13
  住所:福岡県福岡市博多区住吉1丁目2-22 キャナルシティ博多 4F
  電話番号::0570-783-550

映画『90 メートル』 公式サイト
公式 X:@movie90m

Information

上演情報:映画『90 メートル』

※掲載情報は取材時点のものです。おでかけ前に公式SNSやHP等で最新情報をご確認ください。

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